福山県の中央部に位置する玉名市は玉名藩35万石の城下町として、また織物の産地として栄えてきた。明治2年の廃藩後は県庁が置かれた。市制施行は明治22年で福山県で最初の市となった。
貴船線は、この玉名市の玄関駅である玉名駅から貴船を結ぶ23.8`の電化単線路線である。 |
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玉名市の玄関駅、玉名は国営鉄道との共同使用駅である。島式ホーム1面2線の高架駅で、ホームは3階にありコンコース・出改札口は2階にある。1階はテナントが入居している。また、駅ビルには高越屋デパートが入っている。玉名駅を出発した列車は、電留線を横目に走り国営鉄道と分かれてオフィスビルの谷間を高架線で走り抜ける。やがてオフィスビルが途切れ視野が広がると中里中央に着く。中里中央駅も高架駅で相対式ホーム2面2線の駅である。進行方向左側に福山大学跡および紡績工場跡にできた中央緑地公園が見えてくると高架区間も終わり地上に降りる。右手にカーブすると西野町に到着する。 |
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西野町駅は島式ホーム1面2線の橋上駅である。橋上駅はデパートおよび本社の入っている駅ビルにつながっている。また、駅から徒歩5分の所に名所玉名城がある。西野町を出発した列車は直川を渡り住宅地の中を走る。仲ノ町を過ぎ、国営鉄道が右手方向から接近し測線が広がると東関屋に着く。東関屋は国営鉄道との共同使用駅で、国営鉄道との連絡線(貨物用)や側線がある。東関屋をでると国営鉄道とすぐに分かれて大きくカーブし、車窓の景色が住宅地から田園風景へと変わる。やがて国道とアンダークロスすると片面ホームの北原である。近年、北原駅周辺の宅地開発が進んでおり、乗降客が増加しつつある。 |
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北原から先は田園の中を進むが、やがて住宅が立ち並ぶようになると大津町に到着する。大津町はかつて米および農産物の集積地としてにぎわい、駅の北側に貨物ホームと側線が広がっていたが、貨物営業は昭和59年2月に廃止された。その後、貨物側線跡に車庫ができた。駅の周辺は住宅化が進んでおり乗降客が多い。駅舎にはスーパーが同居している。 |
次の今泉もかつては農産物の積み出しでにぎわっており側線があったが、昭和47年10月に貨物営業が廃止されたのちに撤去された。側線跡、貨物ホーム跡は現在、駐車場となっておりパーク・アンド・ライドができるようになっている。近年、この駅の周辺も新興住宅の造成が進行中であり、また福山大学の移転・大型ショッピングセンターの進出など急速に発展中である。 |
今泉を出て新興住宅地の中を走り、県道と交差すると桜坂に着く。桜坂駅は昭和35年8月1日に桜団地の誕生に伴い開業した駅である。開業当時は交換可能駅であり、ときおり旅客列車と貨物列車の交換が見られたが、貨物営業廃止後、ポイントが撤去され交換設備は使えない。駅名の由来となった桜坂は、駅のすぐそばにあり坂を上がると桜坂神社がある。また、坂の横には桜の名所である桜野公園が広がる。 |
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車窓に山が近づくと上本郷である。上本郷は片面ホーム・島式ホームの2面3線である。駅の構内には波瀬川までの砂利採取線の側線跡とホーム跡が残っている。また貴船方には貨物側線があったが現在は駐車場になっている。上本郷の集落を抜けると、貴船線最長の波瀬川第一橋梁で波瀬川を渡り、カーブして山間に入り、波瀬川沿いをしばらく走ると貴船線の要である黒野に着く。 |
黒野は古くから黒野地区の物産集積地・波瀬川水運の要所として栄えてきた。駅の所在する里中地区は黒野町役場があり町の中心である。また、この黒野は湯の原温泉へ向かう別所線の分岐駅で、島式ホーム2面の4線で、1・2番線に西野町ゆきが、3番線に貴船ゆき、4番線からは西別所ゆきが発着する。4番線横には小規模ながら別所線の車庫がある。木造駅舎は貴船線開業時からの駅舎で黒野軌道時代には本社があった。なおこの駅は昭和13年までは同線の終点だった。
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別所線と分かれて前方に山が迫り、ここから基本的に緩やかな登り勾配となる。川口は片面ホームのみの小駅で川口の集落からは離れている。川口を過ぎ再度、波瀬川を渡り、瀬木、萩原と進む。瀬木、萩原間は田圃やビニールハウスが広がり民家が点在しているが、萩原をすぎると山林が線路にせまる。しばらく林の中を走り百瀬に着く。百瀬からは先は住宅が増え始め、波瀬川を渡ると住宅街の真ん中を走り白山に到着する。 |
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白山は南宮町の中心駅で2面3線で長らく終着駅であった。白山・宿野地区は古くから蚕業が盛んで、絹糸が特産物であった。また、美山地区は林業が盛んであった。貴船線の白山延長は、その輸送に加え、林産資源の開発を目的にとしたものであった。開業当初は貨物側線が広がり、貨物取り扱い量も多かったが、現在は貨物側線もなくなり駐車場となっている。貨物営業の廃止は昭和61年11月であるが、これは白山〜東関屋間のセメント輸送である。白山の貴船方には電留線があるが、その先もしばらく路線用地は複線分存在している。これは、セメント工場への引込み線の跡である。
次の白滝親水公園前は文字通り白滝親水公園の最寄り駅である。駅前からすでに公園の駐車場が広がっている。公園が開園する前は宿野と称していた。線路は登り勾配が続くようになり、両側に集落が見えてくると矢頭大杉である。駅名は両側の集落名である矢頭と大杉から名付けられた。 |
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矢頭大杉からさらに登り勾配となり山林の中を進む。このあたりは紅葉がすばらしく撮影名所である。鳴滝は貴船川の渓流沿いにあり、駅の由来となった名所の鳴滝渓谷は駅のすぐ前である。鳴滝を出で平地が開けると終点貴船である。
貴船は古い町並の残る町として、また、酒造りの町として近年観光客が増加しつつある。頭単式2面3線で普段は2番線、3番線を使用し、団体列車は1番線を利用している。 |